できるならば、やさしい人に育ってほしい。そう願うパパやママは多いと思います。どうすれば、やさしい人に育つのでしょうか。奈良教育大学の大西先生に伺いました。

1.お金や欲しがっている物をご褒美に与える(物的報酬を与える)のは、やさしさを育てる意味では逆効果になるので控えましょう。「ありがとう、嬉しいよ」といった言葉や抱きしめる等の愛情表現で応えてあげましょう。

2.子どもが「〇〇ちゃんと一緒に砂場でお山をつくれてうれしかった」などと言ったときは「今日はOOちゃんと一緒に遊べてうれしかったね」と、言葉で共感することで、意識させてあげることが大切です。

ことまま:先生、そもそもやさしさって、どんなものなんでしょう?

大西先生:そうですね、大人と子どもでは少し違ってくるのですが、幼児期のやさしさは「共感する・思いやる・親切にする」ことだと考えられます。幼児の場合の共感するとは、たとえばお友だちが泣いているのを見ると悲しくなるというように同じ気持ちになることから始まります。お友だちの喜怒哀楽の感情を理解して寄り添うことで、広い意味だとお友だちの考えや意見を受け止めることも含まれます。また、人をおもんばかることは、やさしさとしては非常に重要なことなんです。これらの気持ちが積み重なって「やさしさ」が「親切にする」という行動として表れてくると考えられているんです。

ことまま:そうなんですね、子どもの場合は親切にすることが目に見えるやさしさなんですね。でも、うちの子どもはおもちゃを独り占めしたりして、お友だちにも貸してあげることができないんですが、やさしくないってことなんでしょうか。

大西先生:いいえ、違います。人はみんなやさしさの素質を持って生まれてきます。生物のなかでは最もやさしさを備えています。やさしさや親切行動は成長とともに自然に発達し、変化します。はじめは、家族やお友だちなどの好きな人に対してだけ向けられていたやさしさが、自分に親切にしてくれた人にも広がり、さらには他人に親切な人にも広がります。(イラスト説明) 幼い時期には、まだ上手にやさしさを表現できない場面も多くあります。今はまだ発達の途中ですから、やさしくないなんてことはありません。大丈夫ですよ。

ことまま:やさしさって、みんなが生まれながらに持ってるものなんですね。では、最後にもって生まれたやさしさを育むにはどうすればよいのかを教えてください。

他人にやさしい人にやさしくする(例)

BちゃんにやさしくしているAちゃんを見たCちゃんは、Aちゃんにやさしくします。

❶実際に親切にしている場面を子どもにたくさん見せたり聞かせたりする

大げさな親切でなくてかまいません。洗濯物をたたんでいる人を手伝うなどのささいなことで十分です。家族で助け合うほか、幼児向けのアニメや絵本の内容もやさしさや親切な行動を表現したものが多くあるのでオススメです。

❷愛着形成

幼少期よりしっかりと愛されて育った経験がやさしさに繋がります。自分自身が満ち足りているほどやさしい気持ちになります。私たち大人も自分に余裕がないと人に親切にはできないですよね。

❸早くから規範化しない

自分から親切にしたいと思い始める前に「今度はあなたがしてあげよう」や「~した方がいいよ」などと促すのは控えた方がいいですね。やさしさではなく「規範」になってしまいます。自分の中に自然に規範が形成されるまで待ちましょう。幼児期中期から後期になって、子どもが自分からおかえし的なことをしたいと言い出したとき(自然発生したとき)は手伝ってあげて、適度なおかえしを教えてあげるといいですね。たとえば、大人になって誰にでもむやみにやさしくすることは自分を守る意味からも良くありませんね。また、豪華すぎる物品や過度な親切などもよくないですよね。無制限なやさしさや親切ではなく、常識的で適度な行動や量のおかえしを幼児期からの経験の積み重ねで身につけていくことが大切になります。

※「規範」とは
人が社会(自分がいるコミュニティー)の中で、どう振る舞うべきかを示すルールや価値観のことです。幼児期を通して、子どもは大人の言うことやお友だちの様子から徐々に規範を学んでいきます。

国立大学法人 奈良国立大学機構
奈良教育大学 学校教育講座 幼年教育専修
准教授 大西 賢治

※こちらの記事は『ことまま』2025年7・8月号で掲載したものです

ライター

ことまま編集室
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奈良県を中心に子育てが楽しくなる情報を発信するWebマガジン『ことまま』の編集室。
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